スウェーデン(カロリンスカ研究所)の研究

スウェーデン(カロリンスカ研究所)の研究報告

Maria Feychting(マリア ファイヒティング)女史とAnders Ahlbom(アンダース アールボム)博士が行った疫学研究です。この報告書は、1992年に発表されました。
(Magnetic fields and cancer in people residing near Swedish high voltage power lines : IMM-rapport)

研究目的

送電線から発生する磁界が「小児がんおよび特定の成人がん」と関連があるかどうかを疫学的観点から調査・研究する。

調査結果

  • 小児白血病と計算磁界との間に弱い関連性が見られた。
  • 小児白血病と磁界実測値との関連性は見られない。
  • 小児白血病では一戸建ての子供のみ関連性が認められたが、アパートに住む子供では関連性は認められない。
  • 全がん、脳腫瘍、リンパ腫については関連性を示す証拠はなかった。

長所:スウェーデンではがん登録や住民登録など整備されたデータを用いている。

短所:磁界曝露量が正確に把握されているとはいえない。

資源エネルギー庁報告書(H5.12)における評価

  • 他の研究成果と一貫性がない。
  • 症例数が少なく統計的な精度が低い。

ファイヒティング博士の最近の論文(H7)の中での見解

この研究のもっとも明白な弱点は症例数が少ないことであり、観察された相関は偶然に起こったものであるという説明も可能である。

ファイヒティング博士の見解(詳細)

Feychting女史の論文(1995)における自身の評価・見解
Magnetic fields and cancer ( Karolinska institutet : 1995 )

この研究の最も明らかな弱点は、症例数が少ないことである。また、研究された磁界の曝露と病気の両方が極めて稀であるため、観測された関連に対して偶然ということでも説明でき得る。

将来の研究では、可能なその他の外的要因を考慮に入れなければならず、小児白血病との関連の説明として論じられてきた因子、例えば車の排気ガス、ウィルス感染、および殺虫剤などを考慮すべき。

症例-対照研究の進め方

症例-対照研究の進め方
症例-対照研究の進め方
  • 01.調査対象の選定
    1960~1985年に送電線から300m以内に居住していた人を人口登録簿より選定
    [条件] 1年以上居住した大人とすべての子供
  • 02.症例の抽出
    スウェーデン登録所情報をもとに、症例(白血病、脳腫瘍、その他のがん患者)を抽出
  • 03.対照の抽出
    患者1人に対し、4人の健康者を性、年齢、地域、送電線の種類などを一致させて無作為に抽出
  • 04.曝露量の推定
    各症例(患者)、対照(患者でない人)について年平均負荷時の潮流と、送電線と居住家屋との距離から計算により推定。
    家電製品からの曝露や屋外曝露は考慮していない
  • 05.曝露量で層別
    抽出された症例、対照を推定された曝露量に基づき分類
    3.0mG以上の症例はわずか7名

    症例数が少なく統計的精度が低い
  • 06.相対危険度の計算
    患者の比率  患者の比率
    (3.0mG以上)  (0~0.9mG)
    7人    27人
    ─── ÷ ──── = 3.8
    32人   475人
    <95%信頼区間:1.4~9.3>

    磁界曝露量が3mG以上の時、白血病の患者の割合が0~0.9mGの場合に比べて3.8倍となる。

結果についての評価はこちらを参照下さい。

調査研究 一覧