高経年化対策への取組み
高経年化対策への取組み「見極める」
腐食想定マップの活用
鉄塔の劣化進行速度は、例えば 「海沿いでは塩分付着により錆が進みやすい」 など、施設環境によって大きく異なります。
この劣化進行の地域別の違いを踏まえたメンテナンスを行うため、特に鉄塔の強度に影響を与える錆(腐食状況)について、海岸からの距離や風向、温湿度などから、劣化の進行速度を想定しています。これにより、地域ごとの劣化進行速度に応じた、効率的な設備の維持・更新時期の見極めを行っています。
新技術(ドローン)の活用
高経年化した架空送電設備の巡視、点検作業をより効率的に行っていくため、最新のドローン技術を用いて、山道の歩行や鉄塔上での作業を行わずに地上から設備の状況を確認できる方法を検討し、業務効率化に取り組んでいます。
地中ケーブルの劣化分析
地中ケーブルは絶縁体に紙と油を使用したOFケーブルと架橋ポリエチレンを使用したCVケーブルの2種類があり、それぞれの特徴に合った劣化状態を分析しています。
OFケーブルは劣化が進むと油の中に特定のガスが生じる特徴があり、油の中のガスを採取してガスの成分と発生量を分析することで劣化状況を見極めています。
CVケーブルは経年に伴い絶縁体が劣化する特徴があり、撤去したCVケーブルに電圧を加えて、破壊電圧を測定するサンプリング調査を行うことで劣化傾向を見極めています。
また、水分の多い環境下でCVケーブルを長期間使用することで発生するごく小さな異物や空隙を起点に樹枝状に拡大する水トリーと呼ばれる劣化現象を発見するために、損失電流法という絶縁体の中を流れる損失電流を測定・解析する手法により水トリーの劣化状況を見極めています。
水トリーの発生と伸展
フリックしてご覧ください。
CVケーブルの
構造図
①水の浸入
経年により水分が絶縁体へ侵入
②核へ水が凝縮
電界集中箇所(核)へ水分が集中
③樹枝状の水トリー発生
樹枝状の水トリー発生
④樹枝状の水トリーの伸展
樹枝状の水トリーが伸展し、絶縁破壊が発生
油中ガス分析による異常診断
油入変圧器の内部は、コイルを巻線絶縁紙で絶縁し、絶縁油で冷却しています。経年劣化などにより、内部に何らかの異常が生じると、絶縁油中に分解ガスが発生します。分解ガスの量や組成を分析することにより、異常(内部放電、過熱など)の種類や程度を診断することができます。
絶縁油
採油
油中ガス
分析
異常診断
異常の種類 | 発生ガス |
---|---|
絶縁油の過熱 | H2、CH4、C2H6、C2H4、C2H2※ |
油浸固体絶縁物の過熱 | H2、CH4、C2H6、C2H4、C2H2※、CO、CO2 |
絶縁油中の放電 | H2、CH4、C2H4、C2H2 |
油浸固体絶縁物の放電 | H2、CH4、C2H4、C2H2、CO、CO2 |
※高温加熱の場合
H2:水素、CH4:メタン、C2H6:エタン、C2H4:エチレン、
C2H2:アセチレン、CO:一酸化炭素、CO2:二酸化炭素
出典:電気協同研究会 第54巻5号より
フルフラール分析による劣化診断
油入変圧器内部の巻線絶縁紙の劣化が変圧器の寿命を左右するため、絶縁油に含有されている有機化合物のフルフラール値を測定し、その値から平均重合度を算出することで、絶縁紙の劣化度合いを見極めることができます。
フルフラール:絶縁紙を構成するセルロース分子が劣化分解して生成された溶解物
平均重合度:絶縁紙を構成するセルロース分子の長さの目安
絶縁油
採油
フルフラール
分析
寿命診断
平均重合度:1000
平均重合度:400
平均重合度:300
絶縁紙繊維
平均重合度低下(フルフラール分子析出量の増加)
寿命レベル450
設備巡視の記録情報の充実
コンクリート柱は関西エリア一円に施設されており、同製年の設備でも劣化進行速度は、施設環境によって大きく異なります。
この劣化進行速度の違いを踏まえて適切に改修などの措置をしていくため、コンクリート柱を個別に管理し、詳細な設備巡視結果の情報を記録・蓄積しています。
そして、社外の方々の知見も活用しながら、過去の巡視結果や撤去品調査などを組み合わせたデータ分析を行い、劣化進行速度の把握や寿命を推定することで、最適な補修時期や更新時期の見極めを行っています。
不具合実績の蓄積・分析
コンクリート柱の劣化のひとつである内部鉄筋の腐食は、海岸付近など、空気中の塩分濃度によって、進行状況が異なってきます。この知見を踏まえ、これまでの不具合発生実績を塩分濃度(塩害地域の設定箇所)別に分析することで、詳細に不良率(寿命)を推定しています。
高経年化対策への取組み 「延ばす」
塗装による延命化
定期的に巡視や点検を行い、鉄塔の劣化や異常の状態を把握し、状態に応じて、適切にメンテナンスを行うことにより、劣化の進行を遅らせ、できる限り延命化しています。
鉄塔塗装の例
錆の発生が全体の20%未満の場合 | 錆の発生が全体の20%以上の場合 |
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錆の状態を巡視などにより継続監視する | 膜厚測定の結果などを踏まえ 塗装の可否を判断 |
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サンプリング調査および損失電流法による延伸評価
OFケーブルは劣化しにくく、信頼性が高いとされていますが、油を使用するため保守管理が必要になります。一方、CVケーブルは製造コストが安く、保守が容易というメリットがあることから、現在はCVケーブルが主流となっています。
CVケーブルでは、設計寿命とは別に使用状況に応じて劣化状況を評価するため、CVケーブルに対するサンプリング調査や水トリーの劣化診断により、設計寿命の通りに劣化が進んでいるのか、設計寿命を延伸できるかを判断する評価を行い、おおよその寿命を推定して延伸可否の精度を上げています。
平均重合度評価(余寿命評価)における寿命推定
変圧器改修の評価項目の内、平均重合度評価(余寿命評価)があります。この平均重合度は、紙材料の主要構成物質の分子のつながり数の平均値を示すものです。
平均重合度は、変圧器内部の巻線に使われる絶縁紙の劣化が変圧器の寿命に大きく影響することから、電気協同研究会の研究成果を活用し、その劣化度合いを当社独自に分析することで、寿命推定を行っています。
当社では、これまでに蓄積した変圧器の実測データから、余寿命評価の方法を見直し、推定寿命を延伸化しています。
寿命の推定
(電気協同研究 第54巻 5号より)
フルフラールと平均重合度との関係
(当社77kV以下)
劣化状態に応じた適切なメンテナンス処置
コンクリート柱のひび割れや剥離などについて、劣化が軽微な段階で適切にメンテナンスを行うことにより、電柱建替を抑制し、可能な限り延命化しています。
電柱の劣化
フリックしてご覧ください。
ステップ | 劣化プロセス | 強度低下 | 対処方法 | |
---|---|---|---|---|
1 | ひび割れ発生 | ほとんどなし | ひび割れで補修(発見時点で即処理) |
電柱の建て替えが必要となる前に劣化部分を補修 |
2 | ひび割れ箇所から水分および酸素が内部鉄筋へ供給(コンクリートによる鉄筋の防錆能力が低下) | |||
3 | 内部鉄筋が発錆して膨張、内部からの圧力が増加 | |||
4 | 内部圧力により表面コンクリートが浮いて剥離 | 軽微な 強度低下あり |
||
5 | 表面コンクリートが剥がれ落ち、水分および酸素の供給力が増加 | |||
6 | 剥離面積がさらに広がり、鉄筋の過度の減肉や破断が発生 | 過度の 強度低下あり |
電柱建替 | |
7 | 水分および酸素の供給が加速され、過度の剥離へ進展 | |||
8 | さらに強度低下が進行し、強度回復不可能 |
剥離補修前
剥離補修の実施
剥離補修後
高経年化対策への取組み 「減らす」
送変電設備のスリム化
電力需要が減少した場合には、地域の需要規模に応じた設備量となるよう、設備の統廃合や容量ダウン、低利用率設備の流用といった設備『スリム化』に向けて、積極的に取り組んでいます。送変電設備では、高経年化によって更新費用がかかるタイミングにおいて、「更新を行う」案と「統廃合を行う」案を比較・検討し、安定供給を確保しつつ、よりコスト低減が図れる対応をとっています。
配電用変圧器の最適化
配電設備のスリム化
コンクリート柱の新設や建替えといった工事機会においては、強度を考慮した上で、建柱本数が少なくなるよう設備形成をしています。また、電気の契約が廃止となったことにより、不要と判断したコンクリート柱については、後の供給予定の有無などを確認し、撤去しています。
(これまで)
(最適な設備形成時)
安全・安定供給メニュー